博報堂の採用リクルーティング広報の真実

4月になりました。
早いものでケトルも創業7年目、つまり小学校6年間を卒業しちゃったことになります。
これからケトルは中学生。思春期に突入です!

さて、4月になって2012年度新入社員たちの出社と同時に、2013年度入社予定の新人採用面接が一斉にスタートしました。
この時期どのオフィスもスーツ姿の人がたくさん来ていてフレッシュな雰囲気になりますね。

実は今年度の新人採用広報のお仕事をさせていただきました。
今回はこのプロジェクトの話をしようと思います。

昨年秋口に親会社博報堂の人事から、博報堂の新人採用広報のリーダーをやってほしいという依頼がありました。
なかなか忙しい時期だったのですが、「親孝行はできるうちにしろ」というコトバを思い出して、スタッフィングしてチームを編成しました。
ケトルと博報堂のいろいろな部署から入社2年目からベテランまで十数人のチームです。

まず最初に、みんなで自分が博報堂に入社したいきさつを話しました。
驚くことに、ほぼ全員が同じ答えでした。
「会った人で決めた」
その時、博報堂グループの魅力を伝えるには、会社の紹介や仕事の紹介をする前に、この会社で働く人の紹介をしよう、と決めました。

人の魅力。
そういえば僕が博報堂に決めた理由もそうでした。
もともと僕は広告志望でもなく、さらに世界一周バッグパック旅行から帰ったばかりで、自分が一体なんのために就職するのかもよくわからなかったので、とりあえずほぼ全業種のOBに片っ端から電話して会ったのです。
漠然とコミュニケーションや戦略には興味あったけど、いわゆる何がやりたいのかわからないタイプのゼロからの就職活動でした。
でも、20人くらいの方に会っていただいて直接お話を聞くうちに、ピンと来たのが博報堂と某商社、某外資コンサルの3社でした。
最終的に博報堂に決めた理由も、会った人の魅力とそれを醸成する社風でした。
自分との相性というか、水が合うというか、自分がこういう感じのプロとして働いているというイメージが湧いたからだと思います。

次に、全体のコンセプトを『People Expert(人のプロフェッショナル)』にしました。

就職活動とは自分が働く会社を選ぶ活動であると同時に、「自分が何のプロフェッショナルを目指すかを選ぶ活動」だからだと思っているからです。
そして、広告会社が他の産業に負けないプロフェッショナル領域は人の気持ち。
僕らは、お金や技術のプロではないかもしれないけど、「人の心を動かして、人を動かすプロフェッショナル」なのです。
人の心が一番難しいけど、だからこそ人の心が一番奥深くて面白い。
この、広告会社で働く面白さを学生のみなさんに伝えたいという想いをこめました。

前回アドフェストでスピーチした話を書きましたが、People Expertは、海外で開催される国際広告祭のスピーチの中で博報堂グループが使っている言葉です。
博報堂は30年ほど前から「生活者発想」というフィロソフィーをかかげてきた会社です。
メディアやブランドの立場から発想する前に、まず生活者の立場から発想する。
「人をまるごと見る」そのスキルを軸に、社会や企業の課題を解決するDNAが昔から博報堂の全社員にしみついています。
博報堂の社員は人のプロフェッショナル、People Expertなのです。

さて、まずは入社案内をどう作るか。
入社案内の冊子ってだいたいイマイチ読みにくいし読む気にならない。
でも、やっぱりアナログメディアの持つ力は計り知れないはず。
ならば、書店で売れるくらい、お金を払ってでも読みたくなる本を目指そう。
そこで、博報堂グループの様々な領域で活躍する32人のPeople Expertをピックアップして、インタビューして撮影して、久々に本気の編集作業をしました。
何度徹夜したことか。
昨年の仕事納めもこの仕事の原稿書きでした。

でも、このインタビューはとても刺激的でした。
まず、32人の仕事論と人生論が面白くて深い。
ひとりひとり、ケトルのスタジオで撮影しながら、学生時代から今に至るまでの波乱万丈期を深く掘り下げたのですが、毎回時間オーバーしちゃうほど面白い。
僕が博報堂グループをやめない理由はここにあるんだなあと思いました。
どうりで、打ち合わせで雑談が長くなるわけだ。

さらに、みんな仕事のエキスパートと私生活のエキスパートが共通しているのです。
例えば、ワークショップを通じて得た「相手をとことん信用する技術」が自分の子育てに生かされていたり、営業を通じて得た「人とつながる技術」が人生のスキルに生かされていたり、「人間観測の技術」でイケてるダンナをゲットしたり、インターフェイス開発で極めた「快感の技術」がプライベートに活かされていたり(笑)。

なんのプロになるかは、その後の人生やキャラクターに大きく影響してくるものですが、広告産業ほど仕事とプライベートが直結する職業はないかもしれません。
魅力的な人は、仕事ができるだけではなくて、いい人生を楽しんでいる人。
むしろこの業界では、楽しい人生を送っていない人はいい仕事ができないのではないでしょうか。
なので、冊子では、Job ExpertとLife Expertを組み合わせる構成にしました。
この冊子を手にした学生さんはそうやってもう一度読んでもらえると面白いですよ。

次に、ネット上のコンテンツをfacebookに集約することにしました。
32人のPeople Expertの動画を毎日ひとりづつアップして、彼らのメッセージを生の声で伝えると同時に、「Daily博報丼」というコーナーで博報堂についての組織や活動、診療所から人気メニュー、紅白出演者までなんでもアリな日替わりコンテンツを発信しました。
僕が知らなかったこともたくさんありました。
自分が所属するコミュニティについてもっと知ること、そしてそれをこれから仲間になる人と共有することは、素直に素敵なことです。

他にも、生活者研究を連載した「モヤモヤくんとモノサシくん」、社員の仕事着ファッションを連載する「ハクコレ」、2011年入社の新入社員の1日のスケジュールを公開する「新入社員の一日」、学生が知りたい社員の実態を調査した「社員全員アンケート」など、博報堂社員のありのままを伝えるコンテンツを毎日日替わりで発信しました。
たとえばアンケートでは「仕事で泣いたことがある博報堂社員は実は62%いる」ことが判明しました。

採用広報にはやってみないとわからない面白さがあります。
それは、他の仕事にないくらいリアクションがダイレクトなこと。
ターゲットが絞られたダイレクトコミュニケーションだから、通常の広告キャンペーン業務ではなかなか味わえない手ごたえを感じることができます。
ある日、プレエントリー者数がどっと増えたりします。
いいコンテンツを発信すると、「いいね!」がグッと増えていきます。
2月には、日本で5番目に「いいね!」が多い採用広報サイトになりました。
(※ソーシャル就職人気企業ランキング 2月時点)
押してくれたみなさん、ありがとうございました。

2月には、「動く会社案内、生社員ライブ」というイベントを行いました。
社員をとことん前面に立てる方針を貫いて、採用パンフやfacebookで紹介したPeople Expertたちと生で対話していただくイベントを開催しました。
講演と、学生さんの質問にその場で直接答えるパネルディスカッションです。
残念ながら応募多数で抽選となってしまいましたが、32人以上の社員が入れ替わり立ち代わり出演して、1000人以上の方に来ていただきました。

さらに、会社に来ていただいた学生さんの緊張をほぐして自然体で社員と話していただくためのデジタルツールを開発しました。
生社員ライブやOB訪問、面接で博報堂に訪れた学生さんのスマホにGPS連動で100人の社員からランダムにエールが届く「オチツケール」というアプリです。
就活分野には、まだまだデジタルアプリがこれからも次々イノベーションを起こしていく余地があると思います。

最後に、採用広報の仕事をして一番よかったこと。
それは、再び博報堂のことが好きになったことです。
人が思春期を迎えると育ててくれた親に反抗したくなるように、ある程度自分で仕事を支えることができるようになると自分の会社の悪口を言いたくなるのが人の常ですが、採用広報の仕事には、自分の会社に対する愛情に気づかせてくれるマジックがあるのかもしれません。

採用活動、つまり学生さんにとって就活は、出会いの場です。
この数か月間で、直接間接含めて、数多くの人と交流できたことに感謝です。
学生の皆さんがよい就活をされることを心よりお祈りしております。

木村健太郎「やかん沸騰日記」バックナンバー

木村 健太郎(博報堂ケトル共同CEO エグゼクティブクリエイティブディレクター/アカウントプランナー)
木村 健太郎(博報堂ケトル共同CEO エグゼクティブクリエイティブディレクター/アカウントプランナー)

1992年博報堂入社。戦略からクリエイティブ、デジタル、PRまで職種領域を越境したスタイルを確立し、2006年、従来の広告手法やプロセスにとらわれない課題解決を提案、実施するクリエイティブエージェンシー博報堂ケトルを設立。AP(アカウントプランナー)とCD(クリエイティブディレクター)の2足のわらじを履く。

ソニーαNEX“Focus Your Love”、KDDI “android au”などのインテグレートキャンペーンや、ソニーBRAVIA “Color Tokyo”、 “Sony Recycle Project JEANS”、Google“未来へのキオク”といった、デジタルやアウトドアを使ったイノベーティブなキャンペーンを得意とする他、サントリー“伊右衛門”のアカウントプランニング、JUJUのミュージックビデオ“Hello Again”や震災被災地向けの“Dear Japan, from Phuket”などの映像作品制作も手がけている。

受賞歴に、カンヌ、クリオ、ワンショウ、D&AD、ロンドン国際、NYフェス、アドフェスト、SPIKES、ACCなど多数。また、カンヌ、クリオ、アドフェスト、ロンドン国際、NYフェスの各国際広告祭でフィルムやインテグレートからデジタルやアウトドアまで多様な部門の審査員経験を持つ。

コミュニケーションデザイン実践講座ほか宣伝会議講師。

twitter ID: tabinokanata
Facebook: http://www.facebook.com/kimurakentaro
Hakuhodo Kettle: http://www.kettle.co.jp/

木村 健太郎(博報堂ケトル共同CEO エグゼクティブクリエイティブディレクター/アカウントプランナー)

1992年博報堂入社。戦略からクリエイティブ、デジタル、PRまで職種領域を越境したスタイルを確立し、2006年、従来の広告手法やプロセスにとらわれない課題解決を提案、実施するクリエイティブエージェンシー博報堂ケトルを設立。AP(アカウントプランナー)とCD(クリエイティブディレクター)の2足のわらじを履く。

ソニーαNEX“Focus Your Love”、KDDI “android au”などのインテグレートキャンペーンや、ソニーBRAVIA “Color Tokyo”、 “Sony Recycle Project JEANS”、Google“未来へのキオク”といった、デジタルやアウトドアを使ったイノベーティブなキャンペーンを得意とする他、サントリー“伊右衛門”のアカウントプランニング、JUJUのミュージックビデオ“Hello Again”や震災被災地向けの“Dear Japan, from Phuket”などの映像作品制作も手がけている。

受賞歴に、カンヌ、クリオ、ワンショウ、D&AD、ロンドン国際、NYフェス、アドフェスト、SPIKES、ACCなど多数。また、カンヌ、クリオ、アドフェスト、ロンドン国際、NYフェスの各国際広告祭でフィルムやインテグレートからデジタルやアウトドアまで多様な部門の審査員経験を持つ。

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